松山地方裁判所 事件番号不詳 判決
主文
被告人(中略)、同金学完を懲役八月に、同李三万、(中略)同金斗湖を各懲役六月に、(中略)同高守珍、(中略)を各懲役三月に各処する。
訴訟費用中(一)証人中川弘、安田一義、福山泉、一色久幸に支給した分は被告人李三万、朴信求、徐達潤、全学述、白九鉉、金慶〓の連帯負担 (二)証人堀本和夫に支給した分は被告人李三万、徐達潤、金学完、金斗湖、孫任相の連帯負担 (三)証人豊田甫、伊藤信義、藤原純に支給した分は被告人金学完、金斗湖、全学述、李弼用、高守珍の連帯負担、(四)証人田中岩夫、松原隆男、桧垣一郎に支給した分は被告人李三万、徐達潤、白九鉉、羅鐘元、孫任相、安智洙、徐在益の連帯負担、(五)証人中田貞三郎、近松国輝に支給した分は被告人李三万、朴信求、徐達潤、全学述、白九鉉、金慶祥、金学完、金斗湖、孫任相、李弼用、高守珍の連帯負担とする。
理由
第一、被告人等は松山市大可賀町、久宝町、堀川町等に居住し朝鮮人部落をなして集団生活をなしているものであるが、昭和二十二年十二月十二日午前中第二十九情報部野戦公安隊司令官アラブ少佐の「一、朝鮮人に依つて、所有又は占有されている松山女子師範学校附近基地及その他疑ある地区又は占領軍に対し疑ある罪悪を捜査すべし、二、没収したすべての物品は警察本部に送付又は追而命令あるまで貴方に保管すべし」との命令により同隊所属スチブンス軍曹指揮の下に愛媛県経済警察課は松山税務署の協力を得て同部落朝鮮人の密造酒等の一斉検挙をなすため経済警察課員十三名、松山税務署員八名と松山西警察署員約二十名を三隊に編成し大可賀町方面にはスチブンス軍曹と愛媛県経済警察課勤務経済監視官兼警部補安田一義外十四名の警察官吏並松山税務署収税官吏を以て、梅田町久宝町方面には愛媛県経済警察課勤務経済監視官兼警部補河野坂嘉外九名の警察官吏並松山税務署収税官吏を以て、堀川町方面には愛媛県経済警察課勤務経済監視官兼警部補中田貞三郎外十五名の警察官吏並松山税務署収税官吏を以て夫々各現場に赴いて前記密造酒等の検挙の為にする臨検、差押、捜索に着手したのであるが、このような場合には右手続を執行するに付裁判官の令状を必要としないものであるところ
(一) 大可賀町方面においては被告人松宮こと李三万、同篠原こと朴信求、同大本金二こと徐達潤、同山下三郎こと全学述、同白川政夫こと白九鉉、同金川こと金慶〓は相被告人大山こと徐廷斗(審理分離)及高仲子その他朝鮮人六、七名等と共に同日午前十時過ごろ前記密造酒等の検挙に赴いた前記公安隊員スチブンス軍曹及警察官吏、税務官吏等に対し進駐軍の命令により検挙するものであることを知りながら之を妨害する目的で共同して「皆死ね」「馬鹿野郎」などとけんそうしエンピ、ツルハシ、木片等を振上げて威力を示し殊に相被告人徐廷斗においてあるいはツルハシを振りまわしあるいは手拳を以て巡査中川弘の頭部顔面部を殴打し、高仲子において巡査部長西原悟を殴打し、被告人李三万において「皆死ね」「馬鹿野郎」等とけんそうし同朴信求において木片を振上げ同徐達潤において手拳を以て警部補福山泉の頭部等を殴打し高仲子において同人の右大腿部をけ上げ、同全学述において木片を振り上げ「馬鹿野郎」等とけんそうし、同金慶〓において「誰の命令で来たのか、やつてしまへ」等とけんそうし手拳を以て警部補安田一義の頭部顔面部を殴打し以て右警察官吏及税務官吏等に対し多衆の威力を示し共同して暴行を加えてその公務の執行を妨害すると共に該暴行の結果警部補福山泉には右前膊部右胸部右大腿部に全治一週間の打撲傷を、警部補安田一義には頭部その他に全治一週間の打撲傷を、巡査部長西原悟には下くちびるに全治一週間の打撲裂傷を負はさせ、
(二) 梅田町久宝町方面においては被告人松宮こと李三万、同大本金二こと徐達潤、同岡崎正一こと金学完、同岡崎安男こと金斗湖、同広理こと孫任相等は他の朝鮮人三、四名と共に同日午前十時三十分ころ前記密造酒等の検挙に赴いた警察官吏、税務官吏等に対し前記同様進駐軍の命令により検挙するものであることを知りながら右官吏等のなす臨検、差押、捜索を妨害する目的で共同して「何のために朝鮮人の家だけに来るのか」等とけんそうして威力を示し殊に被告人李三万において警察官吏に手向い同徐達潤において十能を振上げて警察官吏に殴りかかり同金学完及金斗湖において「ドイツガドノヨウノコトヲ言ウノカ出テ来イ、ブチ殴ツテヤレ、命ヲ捨テレバヨイノダ」等とけんそうし、同孫任相において手拳を振り上げて警察官吏に殴りかかり以て多衆の威力を示し共同して暴行を加えて警察官吏及税務官吏の該公務の執行を妨害し、
(三) 堀川方面においては被告人山下三郎こと全学述、同岡崎正一こと金学完、同岡崎安男こと金斗湖、同木村三郎こと李弼用、同林守雄こと高守珍は他の朝鮮人七、八名と共に、同日午前十一時ころ前記密造酒等の検挙に赴いた警察官吏、税務官吏等に対し前記同様進駐軍の命令により検挙するものであることを知りながら右官吏等のなす臨検、差押、捜索を妨害する目的で共同して「吾々ハ一人ダツテ生命ノ欲イ者ハオラヌ」等とけんそうし木片を振り上げて威力を示し殊に被告人全学述、同金学完、同金斗湖において警部補中田貞三郎、警部補豊田甫の着衣をつかんで同人等の顔面等を手拳で殴打し更に右金斗湖、金学完等において巡査伊東信義の頭部、顔面部等を殴打し、同全学述においておのを振つて「殺シテヤル」と大声し更に溝におちていた警部補中田貞三郎に向つて濁酒を浴せかけ同金学完と同李弼用において押収品運搬用の貨物自動車にとび乗つて同車に積んであつた濁酒を覆し同高守珍において警察官吏に迫り以て右税務官吏、警察官吏等に対し多衆の威力を示し共同して暴行を加えその公務の執行を妨害すると共に、該暴行の結果警部補中田貞三郎には鼻背部に治療約十五日間の裂傷を、警部補豊田甫には左大腿部下顎部等に全治約五日間の打撲傷を、巡査伊東信義には頭部顔面部等に全治約十日間の打撲傷を負はさせ、
第二、被告人松宮こと李三万、同大本金二こと徐達潤、同白川政夫こと白九鉉、同山本一郎こと羅鐘元、同安本伸一郎こと安智洙、同広理こと孫任相、同川崎一郎こと徐在益等は相被告人徐廷斗等その他数名の朝鮮人と共に同日午前十一時過ごろ松山市住吉町十字路上で堀川町の前記暴行事件救援鎮圧のため急行する松山西警察署警察官吏警部補田中岩夫外十数名の制服及私服の巡査と遭遇しけんそうして暴行に出ようとしたので右田中警部補において同行の巡査に対し被告人等の検束を命じたところ被告人等は激昂し共謀してその検束の執行を妨害する目的で共同して「何ヲ言ウカけんくわナラヤツテヤル」「警察ノ者ガコシヤクナ事ヲ言ウナ」等と不穏の言辞をろうしてけんそうし、殊に被告人李三万、同羅鐘元、同安智洙、同徐在益においては前記徐廷斗と共に田中警部補の顔面部を手拳で殴打し左腰部をけり上げ、更に徐廷斗において巡査松原隆男を手拳で殴打し、同李三万、同白九鉉において前記徐廷斗と共に更に巡査大西守を手拳で殴打し、同徐達潤においては乱斗に入つて暴行し同孫任相においては巡査松原隆男の顔面部に頭突を加え以て右警察官吏等に対し多衆の威力を示し共同して暴行を加えてその公務の執行を妨害すると共に該暴行の結果、巡査松原隆男には左頬部及上くちびるに全治約一週間の打撲傷等を、巡査桧垣一郎には全治約一週間の打撲傷を負はせたものである。
(証拠説明及び法律の適用省略)
(昭和二三年五月七日松山地方裁判所)